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改葬・墓じまい(管理側)

管理者による改葬・墓じまい

「墓地、埋葬等に関する法律施行規則」は、墓地使用者以外が無縁となった墳墓の改葬を行おうとする場合は、墓地使用者および死亡者の縁故者がないことを確認し、それを証明する書類を提出しなければならないと規定しています。具体的には、以下の書類を添付します。
①無縁墳墓等の写真及び位置図
②官報の掲載(写し)
③1年以上の立札掲示(写真)
④期間中に申し出がなかった旨を記載した書面
⑤その他市町村長が特に必要と認める書類 

ちなみに、無縁墳墓についての明確な基準はありません。行政庁が改葬許可申請を処理する際には、申請された墳墓が本当に無縁かどうかの判断はしないようです。

これはあくまで「改葬」の行政手続きです。お墓の改葬で発生する問題、関係する権利は、これだけではありません。

遺骨の所有権 
遺骨の所有権は、祭祀承継者に帰属します。改葬許可は、遺骨の所有権にまで影響を与えるものではありません。
⇒ 遺族が現れ、遺骨の返還を求められたら…

墓地の使用権
墓地は、土地の所有権は管理者にあり、契約によって「土地を使用する権利」を付与している場合がほとんどです。改葬とあわせて墳墓の撤去など行えば、一方的に墓地使用契約を解除したことになります。改葬手続きは、管理者に墓地使用契約の解除権まで補償するものではありません。民事上の責任を問われる可能性があります。

 判例では、墓地の永代使用権の性質として、場所的固定制や時間的永久性が認められ、簡単には取り消すことができないと考えられています。例えば、墓地管理規約に「○年以上管理料未払いの場合…」と定めてあっても、即座にその規定が有効となるものではありません。墓地管理者側の解除権を認めるには、信頼関係が壊れたと言える相応の理由があるかどうかを、個別具体的に検討することになるでしょう。
遺骨の改葬許可申請は、1年以上の立札掲示などで許可されるかも知れませんが、永代使用契約の解除権については、1年や2年という期間で認められるかどうかは、微妙な問題と言えます。

墓石の所有権
 お墓には、遺骨だけでなく、墓石や墓誌など造作物自体にも所有権があります。これらは、墓地使用者が費用を出して建立したものでしょうから、墓地使用者に所有権があります。遺骨と同様、管理者の所有物ではありませんから、一方的に撤去し処分すれば責任を問われる可能性もあるのです。

寺院(管理者)が責任を問われないために

平成26 年、ある高裁判決が話題になりました。新聞記事によりますと、寺院が「無縁墓」と判断して遺骨を改葬し、墓石も撤去したところ、後から名乗り出てきた墓地使用者に対して、約370 万円の損害賠償を命じられたというのです。法律(おそらく「墓地、埋葬等に関する法律施行規則」)で定められた手続きにもとづき、立て札などで使用者からの連絡を求め、市から改葬許可を得ていたにも関わらず、裁判長は「手入れの跡から使用者の存在が強く疑われたのに、調査義務を尽くさなかった寺には過失がある」と判断したとのこと。

無縁簿を寺院(管理者)が改葬する場合には、無縁と判断せざるを得なかった相当の理由が必要になると思われます。その具体的内容は、事案により異なりますので、専門家による法律的な判断を求めながら進めることが大切かと思われます。

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