住職と行政書士の二つの立場で宗教法人の支援とみなさまの終活を支援しています

終活と寺院

終活は仏教そのもの

 お釈迦さまは、王子として過ごされていた頃、すべての者が生老病死を避けては通れぬという絶対の事実を、悩み恐れました。そして、ついには出家をし、修行によってこの苦悩を克服しようとされました。

 ところが、厳しい修行によっても真の安心は得られず、方向を改め、深い禅定に入り、自らの心の奥底を見つめられました。やがて、老病死を受け入れることが出来ない自分に気づき、さらに、自分にある若さや健康や生への愛着がその根本にあると覚っていかれました。

 老病死の不安から逃げず、向き合うことで、安心を得ていくことを終活と考えれば、仏教はお釈迦さまの終活そのものとも言えましょう。

 だとすれば、仏教を学ぶ場である寺院が、最も理想的な終活実践の場と言えるでしょう。
 
 真の「終活」には、正しい死生観が不可欠であり、教えや導きという光を与える存在も必要でしょう。私は、それは寺院が本来果たすべき役目だと理解しています。

仏式葬儀の将来性
 一般的な寺院の収入の中心は、やはり葬儀に伴う布施収入であろうと思います。その葬儀の数は、将来どうなってゆくでしょうか。

 平成21年度の統計で、年間の死亡者数は114万人でした。今後の死亡者数推移予測ですが、平成52年166万人をピークにして減少に転じます。(社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成18年12月推計)中位推計」より)

 そのうち、どのくらいの割合で仏式の葬儀供養がなされているかですが、大雑把に予測する計算をしてみます。

 平成21年は、死亡者の8割が葬儀をして、そのうちの9割が仏式だったとすると、82万件の仏式葬儀があった予測になります。

 平成52年の予測ですが、死亡者数はピークを迎えますが、「直葬」などの流行、戒名は不要であるとか従来の仏式葬儀の省略化が今より進むことが予測されますので、仏式葬儀の比率は下がるだろうと思われます。全体の6割が葬儀を行い、そのうち仏式が8割と仮定すると、仏式葬儀の数は約80万件という結果になります。

大雑把な予測ですが、死亡者数は増えるのに、僧侶が行う仏式葬儀の数は減少するという可能性も考えられるのです。

 平成52年まで、あと30年ありません。遠い未来の話ではなく、20代~40代の住職ならば自分の代で訪れる環境変化なのです。寺院が存続していくためには、何かしらの行動を開始することが必要ではないでしょうか?

まずやるべきことは、貴寺院の現状を正確に把握し、改めて役割を考え、将来のあり方を考えることです。

(参考)
ライフエンディングステージという視点
 平成24年、経済産業省は、「安心と信頼ある『ライフエンディングステージ』の創出に向けた普及啓発に関する研究会報告書」をまとめました。その概念は下図のとおりです。

画像の説明

 寺院が『ライフエンディングステージ』という全体をみながら、自らの役割を見直すことが大切かと思います。人生の終焉を点でなく、大きな流れで見直してみると、寺院の関われる役割が少なくないことに気づきます。

釈尊の教えが根本にあり、各宗門の祖師方の教えが太い幹となっている寺院は、最強の終活相談窓口となれるはずなのです。

 寺院が終活相談の中心になることは、寺院への信頼、生前からの結びつきが強まるだけでなく、相談者が奥深い教えにふれ、心から救われる可能性も高めることになるのです。

 それは、寺院の本来の使命・存在意義の再認識へとつながるでしょう。

 ライフエンディングステージの様々な不安に寺院が寄り添うことで、人々や社会に安寧をもたらさんという寺院本来の役割へとつながることを心より願っております。

期待される寺院
 第一生命保険研究開発室が行った「寺院とのかかわり」というレポートによりますと、法話や坐禅などへの参加に関心を寄せる人は少なくありませんでした。また、寺院がすべき活動としては、「死者・先祖の供養」が圧倒的でした。さらに布教活動や「介護や死の看取りなど、老い・病気・死に関わる取り組み」を挙げた人もたくさんいました。

真面目な寺院に逆風は吹いておりません!

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寺院によるエンディングノート支援」もご参照ください。

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